雑賀光夫の徒然草

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ギリシャ財政危機と世界金融危機によせての学習

ギリシャ財政危機と世界金融危機によせての学習


(一)
私は、雑誌「経済」などが届くたびに、「何か載っているかな」と期待しては裏切られ、いらいらしていた。私が待ち望んでいたのは、ギリシャの経済・財政破綻を中心とした問題についての経済分析であった。
 「世界資本主義が右往左往しているこのときに、新聞報道的なものはあるが、その経済学的分析ができずに、何が科学的社会主義、マルクス経済学か」とまで思っていた。そんな時に出会ったのが、雑誌「経済」12月号「ユーロ圏の財政危機と経済危機」(代田純・駒澤大学教授)である。たった7ページの短い論文、「目次」でも大きくは扱われていない。その論文を読んで、「こんな研究者がいたのか」と驚き、インターネットでこの方の名前を検索して、財政・金融論の専門家であることを知った。
 この論文は、書き出しから気持ちがいい。
 「グローバリゼーションは、国民国家内外で価格格差、賃金格差、金利格差を修練させる傾向をもつ。すなわち、高価格国では、物価下落(デフレ)圧力がかかり、低価格国では物価上昇(インフレ)圧力がかかる。同時に高賃金(所得)国では、賃金抑制バイアスが……金利も各国間で平準化する傾向…」
 問題の根本にある、イロハともいうべき基本問題から書き出されている。日本経済と中国経済などをくらべていつも思うことだから、納得できる。スペースが少ないから、ごちゃごちゃ前置きせずに根本問題から切り込んでいるのが、私には気持ちがいい。

*ここにきて、私は、アレッと立ち止まった。【なお、本稿の前編として、拙稿「ユーロ危機と加盟国の財政赤字」本誌2011年3月号を参照されたい】という注記がある。私がふりかぶって「いらいらしていた」など言った前提がくずれて、まともに雑誌「経済」にも目を通していないことを露呈したのである。
   侍であれば、ここで恥じて腹を切り、まじめな研究者ならここで筆を折るところであるが、恥知らずな私は、代田教授への賞賛をこめて、続きを書かせていただく。
(二)
代田教授は、先の大前提から、ギリシャ・スペイン・ポルトガルなどの国々は、フランス・ドイツ・フィンランドなどのユーロ先進国よりも物価は安かったが、過去10年間で、インフレ率が高く、物価水準が平準化されたことを論証する。労働コストが上昇し、社会保障費も増える。ところが、税収は増えなかった。
その要因のひとつとして、代田教授があげるのは、シャドーエコノミーと呼ばれる非正規経済が大きいことだという。薬物取引から税金逃れまでいろいろあるらしい。
第二の要因は、所得配分の不平等性にあるという。それを示す「クインテッル指数」(説明はこの論文を読んでほしい)は、ユーロ圏平均は、4,8倍だが、ギリシャでは5,8倍。スペイン・ポルトガルでは6倍という。
いま、世界中で、1%が富を独占し99%が貧困に落とされていることへの抗議が巻き起こっているが、財政破綻の国々は、著しく不平等な国なのだという。なぜか?これらの国々は、1970年代まで軍事独裁が続いてきた、民主主義の歴史と伝統を持たない国々なのである。
私は、ギリシャといえば、古代民主政治の国、ソクラテスの国、オリンピック発祥の国、ギリシャ美人・ヴィーナスの国などと考えていたが、そうではない。軍事独裁が続いた国であった。
論文はこれにつきるものではないが、読み終わって紙数を気にせずにもっと書いてほしいという気がする。大変勉強させてもらった論文であった。

追記 このあと、私は、「経済」3月号を探し出した。
 財政危機特集の第2論文が「ユーロ危機と加盟国の財政赤字」(代田純)。その第1論文は、「アメリカ資本主義と財政危機」(河音琢郎)。和歌山大学の河音先生ではないか。
 このころから、僕は目と頭の衰えをカバーする方法を思いついた。雑誌論文を、拡大コピーして、A4の大きさにする。「経済」誌の2倍の大きさになる。岩波文庫の「ワイド版」よりも拡大率が大きい。さらに細かい字のデーターやグラフはそれだけ切り取って、もっと大きくする。この方法で、河音論文を読み切ることができた。教えられるところ、たいへん多かった。
 ここまでくると、アメリカ、ヨーロッパ、日本など、バラバラでなく、世界資本主義の危機という面から考えたくなる。同じ号に「世界的金融危機はつづいている」(井村喜代子・慶応大学名誉教授)という論文がある。17ページもの大論文だ。これも同じ方法でよんだ。すごい論文だ。(ますます、勝手なことを考えていた自分がはずかしくなる。)
 ついでに「TPPを糺す」(村田武)「財政危機と国債バブル」(山田軽彦)を読み、さらに2年前の井村先生の論文まで読んだ。2011年3月号に「深化する財政危機と11年度予算案(上)」(梅原英治)がある。その続き(下)が、4月号にあるがこれが力作だ。これも拡大コピーで読んでいる。一ヶ月にこれだけの経済論文を読むなど、ここ10数年なかったことである。
ただ、拡大コピーして資料を読み込むと、疑問点もでてくる。
①消費税は1989年に創設され(3%)、1997年に引き上げられる(5%)
ところが梅原論文の「表7」では、1989年には消費税は増税されず、その前年に43540億円ふえている。前年の消費から増税したということだろうか?1997年については、その前年には、420億円増えているだけだ。そして1994年度の税制改革で、26450億円も増えている。このデーターは、どう読んだらいいのだろうか。
②経済」3月号のP31、代田論文の「図2」のグラフについている「左目盛」は「右目盛」の誤記ではないのか。   ……どなたか教えてください。

*いま、焦眉の問題になっているヨーロッパ財政危機。今日もNHKで特集を組んでいた。ユーロの経済統合の無理とともに、根本には、アメリカが主導した新自由主義・金融資本主義の問題があると思う。
 県学習協で、河音先生に講師をお願いして、河音論文、井村論文(「経済」2011,3)代田論文(「経済」2011,12,「経済」2011,3)を参考資料に配って学習会を企画したらどうだろうか。

2011年11月23日             雑賀 光夫

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by saikamituo | 2013-03-24 22:50