雑賀光夫の徒然草

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あまりにひどい「放射線副読本」

あまりにひどい「放射線副読本」


1、このたび、文部科学省から「放射線副読本」というものが、各学校に送られてくるという話を聞きました。奈良県会議員・宮本次郎さんがブログで批判しているのを松坂県議が見つけて教えてくれたのです。
県教委の担当者にお聞きすると、昨年秋つくられ、文部科学省から各学校に見本がおくられ、希望を取って、来週にも送られてくるというものです。ほとんどの学校が希望したと言います。d0067266_1159367.jpg

2、「小学生のための放射線副読本」、「中学生のための…」「高校生のための…」の3冊とそれぞれの教師用指導書があります。どれもがカラー、上質紙で、「小学生の」は、18ページ、「中学生の」「高校生の」は、それぞれ22ページあります。教師用指導書は、細かくてもうすこしページがあります。

3 とりあえず「中学生のための放射性副読本」を開いてみましょう。
① 「はじめに」という文があってこの「副読本」の趣旨がかかれています。
 原発事故によって、放射性物質が大気中や海中に放出された。避難や出荷制限がおこっている。
 「放射線への関心や放射線による人体への影響などについて不安を抱いている人が多いと考え、放射線について解説・説明した副読本を作成しました」とかかれている。
② 「不思議な放射能の世界」(P3-4)「太古の昔から自然界に存在する放射能」(P5-6)は、「原爆や原発と無関係に放射線は活用されていること」「自然の中に放射線はある」という説明です。
 「原爆や原発で放射能は怖いものという思い込みがあるが、そんなことだけを考えるのは一面的だよ」ということをいいたいのでしょう。
③ 「放射線とは」「放射線の基礎知識」では、放射線の基礎知識がとかれます。ここではじめて「放射能」「放射性物質」ということばがでてきます。
 「ベクレル」「シーベルト」という単位の説明や、「半減期」の説明、「測定器」の紹介があります。
④「コラム 放射能・放射線の歴史」(p12)
 レントゲン、キュリー夫人などの放射能研究の歴史がかかれています。ところが、悪魔の兵器・核兵器につながったということにもふれていない。原爆の悲惨さも原子力発電所事故もどこにもないのです。
⑤「放射線による影響…外部被爆と内部被爆」(P13-14)
 ほんとうなら、ここは放射能・放射線の危険を説明しなくてはなりません。ところが、その内容は驚くべきものです。
 「放射線は体を通り抜けるため、からだにとどまることはなく」というのは、たしかにそのとおりですが、「そのことが人間の細胞に傷つける場合がある」という説明はありません。妊婦がレントゲン撮影をさけるのは、そのためではありませんか。
 「万一汚染してしまった場合は、シャワーを浴びたり、洗濯すれば洗い流すことができます」…そんな簡単なものでしょうか?
 「内部被爆を防ぐには、放射性物質を体内に取り込まないようにすることが大切です」と書いてあるだけです。そのために日本中が大騒動しているのではありませんか。
 挿絵が、なんともまあ、平気な顔で放射線をあびている女の子、放射線のはいった水を飲んでいる男の子。なんと無神経なのでしょう。
 さらに、ご丁寧に「体内・食物中の自然放射性物質」の詳しい説明。「原発事故がなくても、放射能はどこにでもあるんだよ」という最初にあった説明の繰り返しです。
 「出典(財)原子力安全研究協会「生活環境放射線データーに関する研究」(1983年)より作成」と丁寧に書いてくれているので、「お里が知れる」というものでしょう。
 その次の「放射線から身を守るには」というのが一番大事なところですが
 距離をおいたり、時間を短くしたり、へいしゃ物をおけば、「放射線をへらすことができる」(大丈夫・大丈夫という印象をあたえる記述)
⑥「放射線による影響…放射線量と健康との関係」(P15-16)
 「100ミリシーベルトの放射線をうけても、癌発生が1000人のうち300人が305人に増えるだけだ」しかも、「癌発生の原因は、いろいろで、喫煙・食事・食習慣・ウィルス・大気汚染など…これらと同様の原因の一つと考えられる放射線についても受ける量をできるだけ少なくすることが大切です」
⑦「くらしや産業での放射線の利用」(P17-18)
 またも繰り返して、放射線は役に立っているという説明です。
⑧ 「放射線の管理・防護」(P19-20)
 まず、平常は、原子炉のまわりはモニタリングされているから大丈夫ですという説明です。
 「非常時における放射性物質に対する防護」は、ひどいものです。全文紹介しましょう。
「原子力発電所や放射性物質を扱う施設などの事故により、放射性物質が風に乗って飛んで来ることもあります。
 その際、長袖の服を着たりマスクをしたりすることにより、体に付いたり吸い込んだりすることを防ぐことができます。屋内へ入り、ドアや窓を閉めたりエアコン(外気導入型)や換気扇の使用を控えたりすることも大切です。なお、放射性物質は、顔や手に付いても洗い流すことができます。
 その後、時間がたてば放射性物質は地面に落ちるなどして、空気中に含まれる量が少なくなっていきます。そうすれば、マスクをしなくてもよくなります。」
4 おそらくこの「副読本」は、原子力発電所を見学に行ったとき説明されることの焼き直しでしょう。福島原発で安全神話がくずれ、日本中が、原子力のあり方は、いままでのままでいいのかと模索しているとき、こんな副読本を子供たちに配ろうという文部科学省の神経は、どうなっているのでしょうか。
 しかも、その最後には、「編集委員」メンバーの名前がならんでいます。
 編集委員長は 中村尚司(東北大学名誉教授)副委員長は熊野善介(静岡大学教育学部教授)よくまあ、恥ずかしげもなく名前をならべたものだと思います。
2012年3月10日 さいか

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by saikamituo | 2012-03-10 11:52