雑賀光夫の徒然草

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スターリン秘史(「前衛」不破哲三)を読み始める

スターリン秘史(「前衛」不破哲三)を読み始める              
         雑賀 光夫

(一)
 不破さんが、[前衛]誌であらたな連載をはじめた。そこでは、スターリンの暗い政治の片棒をかついだディミトロフの役割が解明されると聞いて、僕はいやな気持ちになった。自分の青春の思い出が汚されるような気がしたのである。
 本箱から「反ファシズム統一戦線」(ディミトロフ著・国民文庫)を取り出してみる。あまり汚れていないから、学生時代に読んだものをなくして、買い換えたものにちがいない。「学生運動の統一」の問題など考える時も何度も読み返したから、最初に買った本は、ぼろぼろになっているはずである。
 僕が大学教養部にいたころ、京大同学会・教養部自治会とも主導権をとっていたのは、社学同(社会主義学生同盟)、いわゆるトロツキストといわれる一派だった。後に「赤軍派」で有名になった塩見孝也らがいた。僕は、自治会では反主流派の「統一派」に属していた。
 「原子力潜水艦寄港反対」などで主流派が組織するデモ・河原町でジグザグデモをくりかえし、機動隊と衝突するデモに参加するかどうかは大きな迷いだった。基本方針は、こうしたデモには参加しないということだが、クラスのまじめな学生が参加している。僕は、デモがある前の晩、「反ファシズム統一戦線」を読み返して、悩みぬいた末、翌日のデモに参加した記憶がある。活動家というほどでもない級友が、このデモに参加していて、多分参加しないだろうと思っていた僕の顔を見つけて嬉しそうにした表情まで、今でも思い出す。その行動が、よかったのかどうかは分からない。ただ、そこまで考えたことはなつかしい思い出である。だから、あのころ読んだものなら、赤線・青線で汚しまくっていたはずである。
 それでも、パラパラとめくると「幹部政策」のところに、赤い線をいれている。民青同盟の時代に、「幹部のありかた」を語るのに引用したのを思い出す。
 ぼくは、「一番美しい国の名前・ブルガリア。一番美しい町の名前・ソフィア。一番男らしい人の名前・ディミトロフ」と呟いてみたことがある。音声的に本当に美しいと思う。ディミトロフにそんなにほれ込むほど、「反ファシズム統一戦線」(コミンテルン第7回大会へのディミトロフ報告)には、感銘をうけた。
 そのディミトロフが、スターリンの粛清の片棒をかついたんだって。不破さん、たのむから、僕の青春の思い出を汚すような暴露はやめてほしい。こんな気持ちだったのである。
              (二)
 連載は、前衛2月号からはじまった。こわごわページを繰った。
 しかし、そこに紹介されているのは、ナチスに逮捕され、獄中闘争をたたかった輝かしいわがディミトロフであった。しかも、僕が知っていたのよりももっともっと輝ける英雄の姿がえがかれていた。
 前衛3月号は、「コミンテルン第7回大会」(上)である。社会民主主義者を、「社会ファシズム」と決めつけ、「主敵」とさえしていたコミンテルンの方針から、フランス人民戦線のような統一戦線方針にいかに転換がなしとげられたのかが解明されている。
 「社会ファシズム論」をとっていたスターリンが、ナチスドイツの台頭を前にして、本当のファシズムとたたかう必要を感じ始める。政治家・スターリンの直感であろう。そこで、反ファシズムの闘士・ディミトロフを、コミンテルンの中心に据える。ディミトロフは方針転換に苦労する。まわりの前からのコミンテルン幹部は、ディミトロフの方針転換を理解せず、孤立する。その孤独からディミトロフを救い、後押ししたのは、スターリンであった。
 ディミトロフは、フランス共産党のモリス・トレーズとも討論するが、トレーズは最初はその方針を理解しない。しかし、フランス国内でのナチズムの策動とそれを粉砕する労働者の統一行動が、フランスでの事態を大きく前進させる。

*フランス人民戦線にいたるドラマについては、不破さんが「労働組合運動の歴史」(「労働戦線に革新の旗を」新日本新書所収)で紹介したものである。「注」として書いておけばいいのにと思う。不破さんの「歴史」は、共産党が労働組合運動の画期的方針(「10大会6中総」)を出した直後に出された「労働組合読本」(荒堀広編)の一節である。
*不破さんの「労働組合運動の歴史」のフランス人民戦線の部分を、僕は何度も「政治闘争と経済闘争の結合」の教材として労働学校で紹介した。不破さんの叙述の出典を知りたくて、トレーズ「人民の子」をはじめ、フランス人民戦線の歴史を読み漁ったが見つからない。その出典を教えてくれたのは、和教組で一緒に仕事をした楠本一郎さん。「フランス労働運動史(CGT小史)」である。楠本さんから譲り受けて、いま僕の本箱にある。
 
 この時期、モリス・トレーズが統一戦線の方針に転じるのに、「やめておけ」と助言をしたコミンテルン幹部がいたらしい。なんとそれが、エルコリ(戦後のイタリア共産党の指導者・トリアッテイ)であったという。エルコリは、不破さんの論文にも紹介されるが、「コミンテルン第7回大会」の報告者の一人である。その報告は「コミンテルン史論」(青木文庫)におさめられているが、「平和のための闘争」という面で、ディミトロフ報告を補足するものであった。
 トレーズ、トリアッテイといった、ぼくらが人民戦線運動の指導者だと思っていた幹部の認識が、短い期間に大きく変わったのだということが分かる。

               (三)
 その、わくわくする中で「キーロフ暗殺事件」がおこる。スターリンの謀略の一つだそうである。
 話(歴史)はどう展開するのだろうか。推理小説よりも面白い連載が楽しみである。

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by saikamituo | 2013-02-13 21:28